本陣殺人事件-角川文庫
<ネタバレがあります>
舞 台-岡山県の農村 旧本陣屋敷 離れ
殺 人-昭和12年11月25日 朝4時 (67年前)
金田一耕介-33歳
執筆終了-昭和21年 (58年前)
横溝正史-44歳
本陣殺人事件って雪の降り始めの頃だったなあと開いてみたら、「11月25日」殺人だった。11月下旬に読み直したのに、アップが今になってしまった・・・
作家の『私』(=横溝正史)が疎開先で聞かされた「妖琴殺人事件」を語るというスタイルになっている。
日本の密室トリックの中で、一番好きな作品だ。
何がスキって…
あの頭脳明晰な犯人が別の犯人を用意して、準備万端整えていざ決行しようとしたところ、『雪』という自然現象の為に『密室になってしまった』ということだ。
また、トリックで使う物がいかにも日本的じゃない!
日本刀の鍔・屏風・琴・琴糸・琴柱・石灯籠・松の添え木の青竹・鎌そして水車
私がアントニイ・バークリー(の毒チョコ)を好きなのは、あらゆる場合を想定して、偶然など入る余地の無いほどの緻密な計画を立てるところだが、どんなに緻密な計画を立てたところで『人知の及ばない部分』というものもあるように思う。
ずさんな犯罪計画の場合は論外だが、この犯人は与えられた状況を最大限活用した。⇒つまり、『人事は尽くした』のだが、『天からは雪が降ってきて』しまったのだ。
だから、"雪が降るか降らないかの時期の話"って覚えているのだが。
殺人を決行する前に雪が降ってきたことは分ったはずだが、それでも決行したんだよね。推理小説マニアの弟や、昨今の殺人を演出するような輩なら中止したかもしれないが、この犯人にとっては「今日、殺す」ことが重要だったんだよね。動機好きのツボを刺激します。
田舎の旧家に奇怪な容貌の謎の男-は金田一モノではおなじみだが、
鮮やかな紅色の離れ(柱も天井も雨戸も紅殻塗り)
金屏風
琴の音
新婚初夜の惨殺死体
猫の墓
幼児の知能で天才的に琴を弾く美少女
水車の響き
おどろおどろしいわぁぁぁ~
謎解きの中で金田一が、ホームズのソア橋事件をヒントにしたのだろうと述べている。石の重りと紐の単純な構成が、水車と琴糸を使った複雑なトリックに発展しているのだが、凶器を運んでいく動力に"水車"とは、良く思い付くものだ(横溝正史が)。
それにしてもなぁ
新婚初夜の夫が、自分を殺すことを硬く心に決めながら 水車の「ゴットン…ゴットン…」という音が聞こえるまで じっと隣で息をひそめているなんて。
結婚前のお嬢様方の必読書にした方が良いね。
殺されることはないにしても、
伴侶になる人に全てを話すことが最善の道ではないということは、小説ではなく事実だと思うよ。